原文(英語)著者:Mo Stone 熱心に文章を訳していていると、突然慣用句が出てくることがあります。話し言葉や文化的なことわざの翻訳が最も難しいことの1つだという意見に同意する翻訳者は多いでしょう。これらを別の言語や文化へ翻訳することは、必ずしも簡単であるとは限りません。あなたならどうしますか。次回の翻訳の仕事が少し楽になるアドバイスを集めました。 慣用句、話し言葉とは何か 慣用句とは「複数の単語を組み合わせ、それぞれの単語が持つ意味を超えた意味を持つもの」と定義することができます。つまり、全体としての語句がそれを構成する各単語の意味とは異なる、より抽象的な表現です。例えば、to kill timeという英語のことわざがあります。もちろん、time(時間)は、実際にkill(殺す)ことはできません。この表現は「時間を潰す」という意味で使われます。慣用句に似た話し言葉とは、俗語など格式張らないくだけた会話で使われる言葉や語句を指します。 翻訳で注意すること 慣用句の翻訳が非常に難しいのには、いくつか理由があります。まず、翻訳者はソース言語とターゲット言語の両方、さらにそれぞれの文化にも通じていなくてはなりません。そうでなければ、翻訳中にそれが慣用句であると気付かない可能性すらあります。スペイン語のNo tener pelos en la lenguaを例にとってみましょう。これを文字通りに訳すと「舌に髪を置かない」となります。これを知らない人には意味が通じませんが、これは「率直に話す」という意味の慣用句なのです。 慣用句には別の難しさもあります。例えば、ターゲット言語に同等の表現が無い場合や、ターゲット言語に似たような語句があったとしてもそれが異なる状況で使われる場合です。1点目の例は、日本語の「猫舌」です。これは、熱いものを食べたり飲んだりすることが苦手な人を指す言い方ですが、この表現は英語には存在しません。2点目の例としては、スペイン語のQuedarse de piedraが挙げられます。これは「石のようになる」という意味です。この文字通りの訳し方を見て、正しい翻訳は「石のように動かずじっとしている(全く動かずにいる)」という表現が正しいのではないかと考える翻訳者もいるかもしれません。しかし実際には、これはスペイン語で「非常に驚く」という意味の慣用句なのです。 慣用句の訳し方 幸いなことに、慣用句や話し言葉を訳すにはいくつかの方法があります。しかし、これには検討すべき多くの要因が関係してくることから、どの方法を選ぶかはそれぞれの状況によって異なることに注意してください。 慣用句の単語1つずつを訳すのではなく、ターゲット言語での同等な表現を使用します。最も理想的な状況は、似たような意味と単語を持つ言い方がターゲット言語に存在する場合です。似たような単語を持つ慣用句が見つからない場合は、ターゲット言語で同じ意味を持つ慣用句を使用します。例えば、スペイン語のDe tal palo, tal astillaの文字通りの翻訳は「小枝の破片」となりますが、これを英語に訳す場合、Chip off the old block(古い塊の破片)と訳します。こうすることで、ソース言語の慣用句の雰囲気を保ちつつ、「親そっくりの子供」という意味を失うこともありません。 では、似たような話し言葉がターゲット言語にない場合はどうすれば良いでしょうか。これにはいくつかの選択肢があります。全体の意味を伝える自分自身の言葉を使って語句を訳す方法があります。例えば、日本語の慣用句には、英語ではそれに相当する言い方が無いものが多く存在します。「目が点になる」「耳にたこができる」などがその例です。これを英語では、それぞれ「非常に驚く(become shocked)」「繰り返し聞かされる(be told repeatedly)」と訳します。このように言い換えることで、ソース言語の雰囲気が失われてしまうかもしれませんし、特にユーモアのある慣用句はそうかもしれません。しかし、上述の解決策が使用できない慣用句には、多少意味が変わってしまうとしても仕方ないことかもしれません。 今回ここに挙げたアドバイスが、次に慣用句や話し言葉を翻訳する際に役立ちますように。他にも何か方法があれば、下のコメントでぜひ教えてください。