注目のゲームデザイナー、ティム・スタットン=デイビス氏インタビュー

当社ボーダレス・トランスレーションズ(BT)は、他のクリエイターから学ぶ機会を常に大切にしています。とくに翻訳や地域化(ローカリゼーション)の需要が大きいエンターテイメントやゲーム業界のクリエイターは、なおさらなこと。技術ゲームデザイナー兼プロデューサーのティモシー・スタットン=デイビス(Timothy Staton-Davis)氏は、人の理解に長けたリーダーであり、開発を通してチームを導き、人と人をつなげ、優れた双方向体験を生み出しています。BTは先日、ティモシー(ティム)氏にお話を伺う機会を得ました。ビデオゲームへ情熱を注ぐティム氏は、様々な物語を伝えつつプレイヤーに影響を与えることのできる、新しく独特かつ楽しい体験を生み出しています。ゲーム業界に携わることになったきっかけ、ゲーム業界の課題、そしてこの刺激的な分野に進むことを考えている人に向けたアドバイスを伺いました。

Image courtesy of Tim S. Davis

ゲーム業界に入った理由——この道に進むことになったきっかけは?

実際のところ、きっかけは大学院です。カーネギーメロン大学のエンターテイメント技術センター(ETC)で学んでいた2年間にたくさんのゲームを作りました。双方向エンターテイメント作りのあらゆる側面が詰まった2年間でした。

卒業から6か月後に、ゲーム業界で働く最初の機会を得ました。AAAアクションゲームの「ロード・オブ・ザ・リング」と「シャドウ・オブ・ウォー」のミッションデザイナーを担当したんです。その時、サウスカロライナ州からシアトルへ引っ越しました。これが僕のキャリアの始まりです。

ゲームは物心ついた頃からプレイしています。実家には、僕のスーパー・ニンテンドーがまだどこかにしまってあるはずです。中学生の時に、趣味でゲームを作ることを考え始めました。親友と一緒に日本のロールプレイングゲーム(JRPG)のアイデアやキャラクターを考えました。オリジナルキャラクターを描いて物語の構成を作り、「GameMaker」や「RPG Maker」を使って単純なRPGを作ってみたりしました。中学生時代はずっとこういうことを話し合い、ゲームスタジオの名前まで考えたりしていました。

その後、ゲーム作りを仕事にすることも少し考えましたが、真剣に考えるようになったのは、ハワード大学の4年生の時です。

僕には「自分が興味のあることをやる」という考えが常にあって、ゲーム制作へ進むことになったものこの考えがあったからです。当時、一番興味があったのは、影響力のある楽しいゲームをどうやって作ることができるかを考えることでした。当時は他の仕事のアイディアも持っていましたが、そちらを選んでいたら、現在のここまでの満足度は到底得られていないと思います。

ゲーム業界で一番気に入っていること、そして課題は何ですか。

インディー・ゲーム・コミュニティが大好きです。毎年みんなが持ってくる創造性が素晴らしいですし、本当にたくさんの人が世界中の様々な国で面白い個人的なゲームを作っていることが素晴らしいと思います。スタジオや制作者同士が互いを高め合うことや、プレイヤーが古くなったゲームデザインに飽きてしまうように、制作者もそれに飽きてしまうことも良いことだと思います。技術、映画、双方向性が交差する地点にいることは、とても素晴らしいことです。

しかし、ゲーム業界には多くの問題もあります。

ゲーム業界はハリウッドまたは映画業界全体と構造が非常に似ているので、僕はよく引き合いに出すのですが、ゲーム業界が抱えている問題の多くは、映画業界が初期段階に抱えていた(そして今もまだ存在する)問題と同じものです。成長期の苦しみと言ってもいいかもしれません。幸いなことに、映画業界はここのところルネサンス時代に入り、様々な制作者が自分たちのストーリを伝える機会を作ったり与えられたりしています。そして大切なことですが、彼らは資金を得た上で自分たちのやり方でストーリーを伝え、それがたくさんの観客に届いているのです(「ブラックパンサー」がその証拠です)。

異なる点もあります。ゲーム業界でいう観客つまりゲーマーは難しい立場にいます。いくつかの大手AAAスタジオが行う良くない慣習、経営状態やゲームの質を優先させる企業欲——これには「Code-CWA」による組合の努力があります——そしてゲーム制作の作業に対する理解の不足など、これらが全部合わさって、ゲームの制作者とプレイヤーとの関係を難しいものにしています。さらには、AAAの格付けを得るためには、ゲーマーの大多数である白人男性に迎合しなければならないという問題もあります。それ以外にもたくさんの種類の人たちが同じゲームをしているにも関わらずです。

これはまた根の深い問題ですが、でも僕は楽観的です。世の中がこうあって欲しいというものが見えているし、同じように感じている人たちと一緒に仕事ができているからです。

次回も引き続き、ティモシー・スタットン=デイビス氏のインタビュー(後半)をご紹介します。人脈作りや整理整頓のアドバイス、さらに今後の新しいプロジェクトについてお話を伺います。


ティモシー・スタットン=デイビス(Timothy Staton-Davis) 連絡先
Twitter: @timstatis
ウェブサイト: www.timstatis.com
Eメール: timothysd@hotmail.com

※本インタビューは内容を明確にするため編集しています。

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